昨年、イタリア・ミラノ市郊外で開催された「ミラノショー」に、欧州向けニューモデルとして出展された「Versys‐X 300」。
その日本向けモデルとして「VERSYS-X 250 ABS」、パニアケースやエンジンガード等を装備した「VERSYS-X 250 ABS TOURER」がカワサキワールドで展示されるとの情報を聞き、実際に見てきました。
Versys650、Versys1000と違い、キャンプグッズと一緒に展示され、よりアウトドアー感を高めています。
VERSYS-X 250は、VERSYSシリーズのコンセプトである「any-road any-time」性能に未舗装路での走破性を加えたアドベンチャースタイルのツーリングモデル。ツーリングカテゴリーの中では最小排気量クラスのモデルで、クラスを超えた快適性と利便性を実現する。大排気量のアドベンチャーモデルに対して軽量な車体と扱いやすいパワー特性を持つVERSYS-Xは、モーターサイクルでの冒険をより身近なものにしている。
2種類のバリエーションを用意し、アクセサリー類を装着していないVERSYS-Xと、長距離の旅を快適にする装備を供えたVERSYS-X TOURERから選択できる。川崎重工のサイト から引用
では、VERSYS-X 250 TOURER の細部を見ていきましょう。
フロントタイヤ
フロントタイヤは、19インチのスポークホイール。
和休のDJEBEL200も履いている IRC TRAIL WINNER GP-210 でした。タイヤサイズは、100/90-19M/C 57S。
チューブタイヤは、チューブレスタイヤに比べると空気圧を低圧にすることができる特徴があります。
空気圧を低圧にすると、グリップが増加しオフロード走行に適した状態になります。
その他、スポークホイールも路面からの衝撃を吸収する特徴があるので、これらの装備は、VERSYS-X 250がオフロード走行を意識したセッティングであることを示しています。
ヘッドライト
エッジの立ったラインで造形されたカウルに包まれたヘッドライトは、ハロゲンの1灯式。マルチリフレクタータイプで、ヘッドライトの両脇にはポジションライトが装備されています。
ヘッドライト下から走行風を取り込み、カウル内の熱気を、外へ排出するような空気の流れが作られているそうです。
ウインカーは、Z250に装備されているものと同一でしょうか。クリアーのウインカーが装着されています。
フォグライト
「TOURER」に標準装備されているエンジンガードには、オプション品のLEDのフォグライトがセットされていました。口径も大きく、十分な光量が期待できそうです。
スクリーン
スクリーンは固定式です。カウルから少し浮かすように取り付けられているのは、最近の流行りでしょうか。高さがあるだけでなく、横にも広いので、高い防風効果が見込めそうです。
ハンドルまわり
ハンドルスイッチのアップです。Kawasaki車でおなじみのスイッチボックスが使用されています。
左側には、パッシング、ヘッドライトディマー(Hi/Lo切り替え)、ウインカー、ハザードとホーンが装備され、右側にはキルスイッチとスタータースイッチが装備されています。
Ninja250には装着されていない、ハザードスイッチが装備されていることがわかります。残念ながらブレーキレバーとクラッチレバーの調整機構は省略されています。
ハンドルには、ハンドガードが装着されています。フォグライトと並んでアドベンチャー濃度を高める装備ですね。
レバー付け根に共締めして取り付けられています。走行風から拳を守ることが目的で、転倒時にレバー等を保護する機能はないようです。
VERSYS-X 250の左ミラーです。Z250に装着されているものと同じでしょうか。
運転席
ライダー目線から撮影しました。
ハンドル高さは、ネイキッドモデルに比べると、高さがあるものが採用されています。
エンジンガードの張り出し具合がわかります。インナーパネルもきっちりと塗装され、高級感があります。この写真だけを見ると、とても250ccのバイクとは思えません。
メーターパネルは、Ninja1000 2017年モデルなどと共通のデザインがおごられています。
展示車のメーターパネル左側には、DC12Vのソケットが装備され、右側にはフォグライトのスイッチが装備されています。
設置が手軽なこともあって、スマホのナビアプリを利用されている方が増えています。タフネス系のスマホをハンドル周りに装着したら、さぞ似合うことでしょう。この位置なら、スマホへ給電するのも簡単ですね。
ガソリンタンクです。日本語のコーションラベルが貼ってあることがわかります。
燃料は、レギュラーガソリンでOK。タンク容量は17Lで、燃費が24.8km/L(WMTCモード値)ということなので、ざっと300kmほどの航続距離がありそうです。
ライダー目線から撮影した写真を見ると、シート前端とタンクのニーグリップするあたりが大きく絞り込まれているのがわかります。アドベンチャースタイルの車両ですが、足つきは良好かもしれません。
ライダー側のシートです。
表皮はディンプル加工されていることがわかります。ライダーのおしりを適度にグリップしてくれそうですね。
国内仕様は、ローシート(シート高815mm)が装備されるようです。オプション品でハイシートを選ぶことができます。
タンデマー側のシートです。
ライダーとタンデマーの間は、適度な段が付けられており、高速道路などライダーが重心を後ろ目に持っていきたいときの支えになります。
タンデマー側も、肉厚で快適そうなシートの造りになっています。
「TOURER」の場合、タンデマーのグリップ(グラブバー)は取り外され、パニアのステーがグリップを兼ねた造りになっています。
ライダー用の左ステップです。ステップにはラバーが貼り付けられていて、振動を緩和してくれます。バンクセンサーは、意外と短いものが付いています。
タンデマー側のステップです。ヒールプレートは、荷掛フックを兼ねた造りになっていることがわかります。
ステップの裏には、このクラスのバイクにもかかわらず、きちんとリアインナーフェンダー(リアハガー)が装備され、サスペンション等を汚れから保護してくれます。
エンジンまわり
Ninja250などと同じ248cm3パラレルツインエンジンが搭載されています。バランサーが追加されているそうなので、オフロードと長距離ライディングに適した性格へチューンされていることでしょう。
それぞれのシリンダーからの排気管は、エンジンから複雑なカーブを描いて集合し、車体右側に配された五角形断面のサイレンサーから排気されます。
サイレンサーを始め、未舗装路でのグラウンドクリアランスを想定して設計されているそうです。
リアまわり
「TOURER」の装備でもっとも目立つものは、リアに装着されたパニアケースでしょう。
パニアの容量は不明ですが、GIVI E21あたりと同じぐらいの大きさなので、おそらく片側20L程度だと予想しました。
このパニアは、純正やGIVIなどのサードパーティ製が採用している、簡単に着脱ができる構造ではなく、パニアステーとボルト留めされていることが特徴です。
オフロード走行とコストとの兼ね合いを考えると、この構造が良い、とKawasakiが判断したのでしょうが、ヤマハ・スーパーテネレのようなビッグオフロード車もワンタッチで着脱できる機構が採用されていることを考えると、残念なポイントです。
キャンプされる方のツーレポを読むと、現地で外したパニアをテーブル代わりに使用するなどと活用されておられますし、北海道ツーリングなどで長距離フェリーを利用する場合、客室へ運び込みたいものをパッキングしたパニアを「ガチャ」っと外して持ち込む、なんて使い方もありますから、是非、簡単な着脱機構を採用して欲しいものです。
キャリアです。四隅には、フックをかけるところが用意されています。標準車でもこのキャリアは装備されているようですから、タンデムステップの荷掛フックと併せて使えば、積載もばっちりですね。
キャリアの天板には、4か所穴が開いています。GIVIなどのトップケースプレートが装着できそうです。もちろん、トップケースも純正オプションとして用意されています。
Kawasakiのサイトによると、標準車に対し「TOURER」の装備は、パニアケース、エンジンガード、ハンドガード、センタースタンドそして電源ソケットです。標準車に一つ一つ追加するよりも割安に装備できるような値付けになっています。ヤマハ・セローの「ツーリングセロー」みたいな感じですね。
リアタイヤ
フロントと同じく、IRC TRAIL WINNER GP-210 が装着されています。タイヤサイズは、130/80-17M/C 65S。
リアブレーキのアップ。ペタル形状のディスク径はフロント290mm、リア220mm。いずれもシングルディスクです。
和休のまとめ
こいつはズバリ、Kawasaki KLE250 アネーロの後継車種でしょう。
アネーロとは、1995年から2000年頃まで発売された、デュアルパーパス車です。ZZ-R250やエリミネーター250と同系のエンジンを搭載し、足回りはフロント21インチ、リア17インチのスポークホイールで、オフロード走行にも対応した造りになっていました。
12Lの燃料タンクやアッパーカウルを装備し、長距離の高速走行もこなすことができるという、250ccでは希少な存在でした。
アドベンチャー系の車種が流行っていますが、和休としては高速道路の長距離走行をこなすなら400ccぐらいの排気量が必要なのでは、と思っています。
海外のVersys-Xは300ccの排気量なので、Kawasakiとしても「長距離を快適に」ということを考えるとこのぐらいが必要なんだと思っているようですが、日本の車検制度を考えると300ccという排気量は中途半端になってしまうのが残念なところです。
和休は以前、Ninja250をレンタルして神戸から日帰りでビーナスラインへツーリングに出かけたことがあります。
その長距離にわたる高速走行の能力の高さは、250ccとは思えないほどの余裕をみせてくれたので、Versys-X 250の高速走行にも期待したいです。
ライバル車となる Suzuki V-strom250 が昨年、中国でデビューしました。
GSX250Rをベースとする V-strom250 が17インチのキャストホイールにチューブレスのオンロードタイヤを履くのに対し、 VERSYS-X 250 は、スポークホイールでチューブタイヤを履いていることから、オフロード走行を強く意識したモデルであることがうかがえます。
今後、V-strom250 が650や1000と同様に、オフロード走行を意識したXTモデルを出すのか、はたまた VERSYS-X 250 がキャストホイールを履かせオンロードモデルを出してくるのか、妄想は尽きません。
250ccのクラスがとても盛り上がってきそうで、楽しみです。
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